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アパート経営の大規模修繕の費用相場は?小規模修繕との違いや実施時期も解説
タイトル:アパート経営の大規模修繕の費用相場は?小規模修繕との違いや実施時期も解説
アパートを安全に管理し、資産価値を長く維持するためには、大規模修繕が欠かせません。しかし、アパートの大規模修繕はマンションよりも一般的ではなく、長期的な修繕計画を作っていないアパートも存在します。
アパートオーナーの中には「大規模修繕を実施したいが進め方がわからない」「多額の費用がかかるのではないか」と悩んでいる人もいるでしょう。
本記事では、アパートの大規模修繕費用や実施時期の目安を解説します。小規模修繕や原状回復との違いにも触れているため、アパート修繕を検討しているオーナーはぜひ参考にしてください。
目次
アパート修繕の種類
アパート修繕は、実施のタイミングや工事内容によって大きく以下の3つに大別できます。
- 大規模修繕
- 小規模修繕
- 原状回復
それぞれ詳しく解説します。
大規模修繕
大規模修繕とは、屋根や外壁など建物の骨格に当たる主要構造部を対象とする修繕です。点検でみつかった不具合などをまとめて修繕して、アパートの劣化を防ぐとともに資産価値を維持する効果も見込めます。
主な修繕部位は、以下のとおりです。
- 屋根、雨どい、外壁、ベランダ
- 共用部分の階段や廊下
- 給排水管
- 室内設備(給湯器、エアコン、トイレ、浴室など)
工事の期間は半年~1年程度と長めで、屋根や外壁の修繕では通常足場を組む必要があるため、比較的高い費用がかかります。
分譲マンションでは、長期修繕計画に基づく大規模修繕が定期的に実施されます。一方、賃貸アパートでは、長期修繕計画が作られないケースも珍しくありません。しかし、共用部分や敷地内で事故が起こると、管理会社やオーナーの責任が問われます。重大な事故を防ぐためには、大規模修繕が不可欠です。
小規模修繕(老朽化予防)
小規模修繕は点検や入居者からのクレームで発覚した不具合に対処するための小規模な修繕です。
アパートオーナーには、入居者と交わした契約内容を履行する義務があります。エレベーターや給湯器、エアコンなどの施設設備に不具合が生じた場合は、早急に対処しましょう。
雨漏りや水漏れトラブルも放置できません。急激な劣化の原因になりやすく、火災などの重要な事故につながるおそれがあるためです。
アパートの点検には、法定点検と自主点検の2種類があります。法定点検には消防点検や貯水槽点検、建物設備点検などが含まれ、法律で定められた周期で実施しなければなりません。
一方、自主点検には、シロアリ対策や外壁・コーキングのひび割れチェックなどが含まれます。屋上の緑化工事やWi-Fi設備導入など、時代のニーズに応えるための工事も、小規模修繕の一種です。
原状回復(退去後)
原状回復は、入居者の退去後に次の入居に備えて実施する修繕です。具体的には、フローリングや壁紙の交換などが含まれます。
賃貸アパートでは、原状回復の修繕費用を入居者が負担します。しかし、責任の範囲を巡ってトラブルになるケースも少なくありません。
国土交通省のガイドラインによると、原状回復とは故意や過失、通常の範囲を超える使用によって生じた損耗・損傷を復旧することです。入居時の状態に戻すことではなく、経年劣化は範囲に含まれません。一方、たばこのヤニやペットによるキズは原状回復の対象です。
原状回復で入居者とトラブルになった場合は、国土交通省のガイドラインを参考にする、管理会社に相談するなどの方法を検討しましょう。
アパート大規模修繕の費用と時期
アパートの大規模修繕を実施する時期や費用は、建て方や建材の種類、立地によっても異なります。
塗料を使った外壁・屋根の場合、修繕時期の目安は築11~15年程度です。外壁改修の費用目安は、200~300万円程度です(足場設置費用を含む)。
アパートの大規模修繕を行うメリット
アパートの大規模修繕を行うメリットを解説します。
入居率アップ
大規模修繕を実施するとアパートの外観が良くなり、入居率アップにつながります。建物の外観は、アパート選びの重要なポイントの一つです。
室内がきれいでも、外観に難があるアパートを好む人は多くありません。外壁やエントランスが汚れている、古い、破損しているなどの問題があると、室内を見る前に選択肢から外されてしまう可能性もあります。
外観の悪さが「管理が行き届いていない」という印象につながる点も問題です。多発する地震や新型コロナウィルス感染症の影響もあり、安全で清潔な物件にこだわる人が増えています。
大規模修繕を怠ると利用者の不安や不満が高まり、近隣に新築やリフォーム済みの物件ができた場合に入居者を奪われてしまう恐れも出てきます。
入居者の安全を守れる
入居者の安全を守る上でも大規模修繕は欠かせません。アパートの老朽化を放置すると、事故のリスクが上がります。
事故の具体例は以下のとおりです。
- 床や階段が腐食して落下する
- 手すりが外れる
- 外壁や屋根の破片が落下する
- 雨漏りによって電気配線が腐食し、漏電や火事を起こす
人身事故につながれば高額な賠償金が発生する可能性も出てきます。
物件をアップグレードできる
大規模修繕のメリットは不具合の修繕のみではありません。建物に付加価値を付与してアップグレードする効果も見込めます。
アパートに限りませんが建物は必ず経年劣化し、物件へのニーズも変化します。建てた当時は最新物件だったとしても5年10年経てば中古物件になり、市場での競争力が低下するケースが一般的です。入居者が集まらなければ、賃料の値下げを余儀なくされる可能性も高まります。
しかし、大規模修繕を機に利用者のニーズに合う最新設備を導入すれば、築年数が古くても賃料を下げずに済みます。
例えば市場ニーズが高い設備の例は以下のような設備が挙げられます。
- ホームセキュリティ
- モニター付きインターフォン
- 無料インターネット、高速インターネット
- エントランスのオートロック機能
- 宅配ボックス
アパートの大規模修繕費用はどうやって準備するか?
アパートの大規模修繕費用を準備する方法を解説します。
アパートでも修繕積立金は必要
分譲マンションでは、部屋の所有者が毎月大規模修繕費を支払い、管理会社が管理するケースが一般的です。しかし、賃貸アパートでは、オーナーに大規模修繕の費用を準備する責任があります。
大規模修繕には通常まとまったお金がかかり、さらに突発的な小規模修繕が発生する可能性も想定されます。その資金を自分で準備しておかなければ必要な修繕ができません。
例えば、約300万円の大規模修繕を築10年目に実施する場合は、1年ごとに約30万円を積み立てておく必要があります。
大規模修繕ができずに建物の老朽化を放置すると、退去者が増えて家賃収入が減り、費用の捻出がより難しくなる悪循環に陥りかねません。
賃貸オーナー期待の「大規模修繕積立金共済制度」について
大規模修繕積立金共済制度は、賃貸関連団体が立ち上げる共済協同組合に修繕積立金を掛け金として支払う仕組みです。
掛け金は経費にはできませんが、大規模修繕の実施時に引き出すお金を全額損金にできます。損金とは、課税所得を求める際に益金から差し引けるお金です。
本制度の最大のメリットは、賃貸アパートでも計画的な大規模修繕が可能になる点です。さらに、節税対策にも役立ちます。ただし、利用にあたっては長期修繕計画の提出が求められます。
賃貸関係者は制度の成立を長年待ち望んできましたが、2020年にようやく国土交通省に認められました。修繕の対象は外壁と屋根に限られる見込みですが、2022年時点では制度の詳細が明らかになっていません。今後の動向に注目しましょう。
キャッシュフローを増やす
アパートの大規模修繕費用を準備したい場合は、キャッシュフローを増やす方法を検討しましょう。キャッシュフローとは、家賃収入から経費を差し引いた後に手元に残るお金です。ただし、安易な賃料の値上げやコストカットは望ましくありません。
融資や手元資金を利用して物件数を増やせば家賃収入が増えるため、修繕費用を捻出しやすくなるでしょう。
アパートの大規模修繕費用を抑える方法
ここからは、アパートの大規模修繕費用を抑える方法を解説します。
大事に住んでくれそうな人に入居してもらう
アパートの劣化の度合いは、部屋の使い方で大きく変わってきます。しかし、入居者が決まった後は、オーナーでも許可なく室内をチェックできません。
部屋を大切に使ってくれる人に入居してもらうためには、入居者審査を徹底する必要があります。入居者審査は通常管理会社が担当するため、あらかじめ希望を伝えて対応を依頼しましょう。
日常点検と小規模修繕をこまめに行う
日常点検と小規模修繕をこまめに実施することも費用を抑えるポイントです。
不具合が起こる前にリスクを発見できれば、費用は最小限で済みますが、リスクを見逃して不具合が拡大すれば、その分費用がかさみます。重大な問題に発展すると刑事責任や民事責任が問われる可能性も出てくるため、注意しましょう。さらに、法的点検の実施もオーナーに課せられた義務です。
国土交通省は、マンションやアパートで実施すべき点検項目を長期修繕計画ガイドラインで紹介しています。アパート経営を始める人は、どのような点検が求められるのかを事前に調べておきましょう。オーナーが自主点検を実施できない場合は、実績のある管理会社に委託する方法が有効です。
複数個所の工事はまとめて行う
複数個所の工事をまとめて行うと、単発で行うよりも費用を抑えられる場合があります。例えば、足場が必要な屋根と外壁の修繕をまとめて実施すれば1回分の足場代で済むため、経済的です。
ただし、必要な工事を集中的に実施すると、まとまった費用がかかります。金銭的に厳しい場合は、数年程度のスケジュールを組んで順次修繕を実施しましょう。例えば、1年目は屋上防水、2年目は東側の外壁、などです。修繕費の返済を分割払いにできる場合もあります。
火災保険を活用する
火災保険に加入していれば、火災や自然災害で生じた屋根・外壁の破損、雨漏りなどの不具合は保険金でカバーできます。
主な補償対象は以下のとおりです。
- 火災・落雷・破裂・爆発による被害
- 風災・雪災による被害
- 水ぬれ・盗難の被害
ただし、サービスによって補償の対象や内容は異なります。建物と家財の両方が補償されるサービスもあれば、家財のみを対象とするサービスもあります。
経年劣化で生じた不具合やそれに起因する被害は、基本的に補償の対象外です。例えば、放置していた屋根のひびが原因で雨漏りが起こっても、被害は補償されません。
修繕まで想定した建築プランで建てる
修繕まで想定したプランでアパートを建てる視点も重要です。例えば、使用する外壁材によって、修繕が必要な時期が変わってくる場合があります。耐久性が高いタイルであれば、修繕の目安は築12~18年程度です。一方、窯業系サイディングや金属系サイディングでは、築10年を目安に修繕が必要です。
ただし、修繕の必要がない建材はありません。アパート経営は通常長期に及ぶため、必ず大規模修繕費が発生すると考えて準備しておく方が安心です。
大規模修繕を行うときの注意点
大規模修繕を実施する際に知っておきたい注意点を解説します。
事前告知をする
アパートで大規模修繕を実施する場合は、事前に入居者に告知しましょう。オーナーには物件を安全に管理する責任があるため、入居者は大規模修繕に反対できません。しかし、トラブルを避けるためには事前告知が有効です。
工事が決まった後に入居者から「聞いていない」「契約違反だ」などの声が上がると、予定通りに工事を始められない恐れも出てきます。
入居予定者に対しても、契約時に大規模修繕の時期を通知しておくと安心です。賃貸契約書や重要事項説明書には大規模修繕の予定を盛り込む義務はありませんが、質問されれば説明義務が発生します。契約時の説明に誤りがあれば責任を問われる可能性があるため、誠実な対応が不可欠です。
入居者に配慮した工事
大規模修繕では、入居者に配慮した工事を心がけましょう。騒音や異臭、ほこりの発生を避けられない大規模修繕は、入居者にとって大きな負担です。
事前告知をしていても、実際に工事が始まると「洗濯物を干せない」「子どもや病人が寝られない」などの苦情につながるケースも珍しくありません。苦情を軽視して工事を進めると、裁判沙汰になる、退去者を増やすなどのトラブルになる可能性が高まります。
トラブルを最小限に抑えるためには、工事の詳細な内容や時期を掲示板などでこまめに告知する、苦情には誠実に対応するなどの努力が求められます。
一時的な家賃減額
大規模修繕中に入居者の生活に支障が出る場合でも、必ず賃料を減額しなければならないわけではありません。しかし、不満を感じた入居者が退去を選ぶ可能性はあります。
場合によっては管理会社や入居者と交渉した上で、一時的に賃料を下げる方法も検討しましょう。ただし、賃料の減額はキャッシュフローに大きな影響をもたらします。元の金額に戻しにくくなる可能性も考慮して、慎重に対応を決めましょう。
まとめ
大切なアパートを長く維持し、家賃収入をコンスタントに得るためには、修繕が欠かせません。
なかでも、屋根や外壁などの骨格部を修繕する大規模修繕は重要です。大規模修繕に合わせて利用者のニーズを満たす最新設備を導入すれば、アパートの資産価値が高まり、市場での競争力もアップします。
ただし、修繕費用はオーナーが準備しなければなりません。長期的な資金プランを立てるとともに、積立金制度や火災保険を上手に活用しましょう。
「大規模修繕費用を捻出できない」「アパート経営を始めたいが、不安がある」という人は、不動産経営のプロに相談してみてはいかがでしょうか。